......

幼馴染みが宗教にはまってしまいまして。
八方手を尽くして、幼馴染みの現状を打破できないか模索中な訳ですが。

誰に相談しても、返ってくる言葉は同じ。


「関わらない方がいい」「見捨てろ」「縁を切れ」


......理詰めで考えるとそうなるんです。そうなるんですが。


小学校低学年で初めて同じクラスに。
偶然同じ水泳教室に通っていて、ふたりはいつも塩素焼けした髪の毛で。
君は泳ぐのがとても速くて、自分がどんなに頑張っても勝てなかった。
放課後はお互いの家に遊びに行って、ファミコンしたり近所の溜め池でザリガニ取ったり。
忠霊塔に肝試しにも行ったね、もう覚えてないか。
一緒にテニス部で真っ黒に日焼けして。ボール拾いばっかりだったけれど。
高校も一緒だったのに、不思議とクラスは一緒にならなくて残念だった。
自分は進学して、君は自衛隊に入って。
どこにいても手紙をくれたね。送ってくれた半長靴、まだ履いてるよ。
自衛官を2期務めて出てきた君は「パン屋になる」って、頑張ってた。


そして......。
あんなにまめに手紙をくれていた君が、返事を寄越さなくなった。
電話も繋がらなくなった。
どこにいるのか、なにをしているのかわからないまま、3年経った。
不意に君から手紙が来た。発信元は韓国。
書いてあったメールアドレスに急いで返事を出した。連絡が取れた。


君が説明してくれた近況は、自分が想像する限り最悪のものだった。


......君はいま幸せだ、って何度も言っていたけれど。
本当の幸せって、そうやって自分に言い聞かせるものじゃないんだよ。
本当に幸せなら、幸せになりたいなんて意識しないんだよ。
君は納得できないかもしれないね。幸せになると教え込まれて得た生活だろうから。

何が原因なのか、いまの君には見えないかも知れない。
教えてあげても、いまの君には聞こえないかも知れない。
周りの人は、手遅れだから関わるなという。自分が知ってる君は死んだと思えと。
それでも君が幸せだというなら、それでいいかもしれない。
そのまま夢を見続けていた方が、確かに幸せかもしれない。

だけどいま君がそうだと信じている幸せは、

君が本来得るはずだった当たり前の幸せや、

君の親や友達を突き落とした絶望の淵を覆い隠す、幻。


ある時ふと、君がその幻から覚めることがあったとして......


君の側に自分はいなくてもいいんだろうか?


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