Go West~さよならCanBe~

ご注意:あまりウケ狙いでない、至極真剣な(?)シロートPC買い替え顛末記です。
PC用語が続出しますんで、意味不明なところはテキトーに読み飛ばしましょう。

不意打ちXデー。

1999年12月2日。
いつものようにPCの電源を入れ、PostPetでメールを受信中の出来事。
動作中のはずのHDDが急におとなしくなり、・・・それっきりだった。
まじでそれっきり。
心の準備もなにもあったもんじゃない。
電源は入るし、メモリもカウントする。
が、HDDはうんともすんとも言わない。
フロッピーから立ち上げてSCANDISKを実行しようにも、HDD自体の存在を認識してくれない。
いったい何があったのか?
原因は今でもわからない。

NECのCanBe10。
大学時のバイト&奨学金で初めて買った自分のPC。
父が新しい物好きだったお陰で、昔からPCは家にあった。
そんなわけで自分が一番最初に触ったPCは、NECのPC8801。
小学生高学年の頃からそれを触らせてもらってた。
BASICで音楽の教科書に載ってる「ドナドナ」とか打ち込んで、MIDIポートにキーボードつないでひかせたりしてた。
一太郎もver.1から使ってたっけ。
んで、初代のPC8801以来、うちでPCといえばNEC製だった。
今も実家に帰ったら、新旧併せて4台くらいあるんじゃなかろうか。
だから自分でPCを新しく買おうと思ったときも、NEC製以外はまるで念頭になかった。
で、買ったのがCanBe10。
CPUはPentium100、HDDは800メガちょい、メモリは16メガ。
TVチューナーとキャプチャが標準でついてて、FAXモデムで遅いながらもインターネットができる。
まさに器用貧乏
でかいことはできないけど、妙に小便利で、なんとなく手放せなかった。
だから東京に出てくるときも、わざわざ実家から大事に梱包して持ってきた。
卒論もこれで作ったしね。
真剣にこいつをグレードアップさせてやろうかと考えたこともあった。
お金おろして秋葉原に行ったけど、MOもCD-Rも付けられない、CPUもHDDも入れ替えられない。
結局、メモリを限界の128メガまで増やしてやるのが精一杯だった。
NECが全部自社製の部品で組み立てちゃってるから、応用がきかないんだって。
このときになって初めて不便と思ったんだから、おめでたいと言えばおめでたい。

それでもまぁ、それなりに不自由なく使ってたんだが、それがいきなり死んだ。
ホントにいきなり。
サポートセンターに問い合わせてみたけど、案の定、HDD交換になるらしい。
古くても純正だからか、交換で5万はするそうな。
ギガ単位のHDDが当たり前の今、800メガのHDDに5万・・・。
どうせデータも戻らないんだよなぁ。
ほかのパーツは大丈夫なのに、HDDが駄目になっただけで為す術なし。
例えが悪いけど、植物人間ってこんな感じだろうか。
頭脳が動かないだけで、あとは健康。
原因がまるで判らないぶん、やりきれない。
電源だけ入る「箱」を前に、考えて、考えて、そして結論は出た。
潮時だ、これは。
ほかのパーツが使えるからってこいつにこだわっても、もう上は望むべくもないのは判ってる。
買い替えよう。
それも、自分の欲しい機能を備えてるっぽい既製品を妥協して選ぶんじゃない。
今までほしくても入れられなかった機能を、テッテー的に詰め込んだやつを作る!

思い立ったが吉日。

12月4日。
とりあえず現金で25万ほど持って秋葉原へ。
行動が早いというか気が早いというか・・・。
つーか、PCが死んだちょうど同じ日に、人間関係ですごくしんどいことが重なっちゃってねぇ。
今だから言えるけど、ホント、じっとしてたら頭がどうかなりそうだった。
今思えば、ちょうど同じ日にPCが壊れてくれたから、変に滅入らずにすんだのかも知れない。
ありがとうCanBe。
しかしおまえが壊れるまで、自分がこんなにPCに依存してたとは知らなかった。
まじでPCがないと、とにかく何もできない。
インターネットはもちろん、TVにも使ってたから、ゲームもできない。
シーマン日記を終わらせた次の日でホントに良かったよ。
すごい偶然だけど。
PCに詳しい知人に片っ端から電話をかけてアドバイスを仰ぎつつ、お店を物色開始。
まず絶対譲れないのはTVチューナーボード。
一人暮らしだし、PCとTVを別々に持ってたって場所の無駄だ。
今思うと、CanBeってホントに相性良かったなあ。
オールインワンって確かに器用貧乏なんだけど、外付け機器があまり好きじゃない自分にはピッタリだった。
TVはもちろん、モデムとかHDDとか、別に買った方が安くあがるし買い換えも楽なんだろうけど。
あ、と、CDドライブはRW(書き換え可能)タイプがいいな。
これがあれば、MOなくてもバックアップできるはず。
外付けがイヤでCanBeに結局なにも付けてなかったから、バックアップなんてFDにとっとくしかなかった。
今でも消えちゃったデータのことを考えるとみじめだけど、でも外付けはイ・ヤ
話は戻って、RWってCD-Rも使えるんだよね?
たぶんそうだったと思う。
こんないい加減な知識でも、2種の資格とか持ってていいんでしょうか。

そんなワケで、TVチューナーとCD-RWの二つを備えたキットを売ってるお店をようやく発見。
ちなみにこれまでの機能と、自分の希望と、お店のキットの違いは次みたいな感じ。

使ってたCanBe
 CPU:Pentium100
 OS:Windows95(なんとこれもNECバージョン)
 HDD:0.8GB
 メモリ:128MB(限界)
 モデム:14.4kbps(いわゆるFAXモデム)
 その他:FDDドライブ/2倍速CDドライブ/TVチューナー
自分の希望
 CPU:PentiumⅡ以上
 OS:なんとなくWindows95(98でもいいけど・・・)
 HDD:2GBくらいほしいかなぁ
 メモリ:128MB以上
 モデム:今より速いやつ
 その他:FDDドライブ/CD-RWドライブ/TVチューナー
お店の組み立てキット
 CPU:PentiumⅢ500
 OS:Windows98
 HDD:20GB
 メモリ:128MB(増設可能)
 モデム:56kbps
 その他:FDDドライブ/40倍速DVDドライブ/8倍速CD-RWドライブ/TVチューナー

このセットってDVDドライブまでついてんの?・・・そしたらプレステ2いらないじゃん
肝心のお値段の方は、モニタ別売りで約15万程度。
希望は充分すぎるほど完璧に満たしてるし、いいんじゃないスか。
ん、ちょっと待て。
ここって組み立てサービスとかなくて、完全に自作?
「だからお安いんですよ。30分ほどでご用意できます」
相場知らないから安いか判らんけど、30分でお持ち帰り可能ってのはすごすぎる。
よそは納品10日くらいとかザラなのに、この店って一体どういう流通ルートを持ってんだ?
まあ早いに越したことはない。
しかし自作か・・・会社のをちょこっと組み立て手伝ったことはあるけど・・・。
あのー、一から組み立てたことない自分でもできるもんなんですかね。
「あぁ手伝ったことがあるのなら大丈夫ですよ~、組み立てマニュアルもお付けしてますから大丈夫」
なんか売る側のカラ保証にも聞こえるが、ここはアンタの言葉を信じるぜ。
本体ケースは憧れのタワー型、これって種類選べるの?
「これ(ミドル)と、これ(ミニ)と、これ(ミドル・スケルトン)の中で、お好きなのをどうぞ」
う、スケルトンは「いまっく」狙いぽくてヤだ。
このミニタワー、裏にサービスコンセントもついてるし、デザインもいい感じだし、これに決定かな。
あ、と・・・そうだ、この際メモリは限界まで増やしとこう。
同じお金でCPUを若干ランクアップさせるくらいなら、まずはメモリを増やす方が効果的。
って、随分前に何かの雑誌で読んだからだけどね。
「メモリはあと2枚増やせますね。128MBは1枚23,000円です」
2枚追加で約5万・・・うぐ、あとモニタも買わなきゃいけないのに。
そうだよ、使ってたCanBeってモニタも一体型だったから、ほんっっっっとに何にも使い回しできないんだよう。
できれば全部で20万以内に押さえたかったけど、ここは思い切って液晶だ!
ところで液晶で17インチだと、おいくら?
「モニタだけで20万越えちゃいますよ?」
・・・・・・、15インチ(10万)でいいです。
それでもあっとゆー間に予算オーバー。
まあいい、欲しかった機能は全部入ってるし。
足りないお金おろしてくるついで、荷物を半分に分けてもらって家(渋谷)と秋葉原を往復することにする。
15インチの液晶モニタとマザーボードの袋を両手に下げ、リュックには各種ドライブ類。
さながら闇市の買い出し状態
我ながらすさまじい。
もちろん、家に着いたときには両腕の感覚ナッシング。
しかし辛くはない。
逸る気持ちを抑えつつ夕方まで腕を休めてから、再度秋葉原へ。
残金と引き替えにタワーケースと残りのパーツ類を受け取って速攻帰宅。
うはははは、腕の痺れも何のその、今から徹夜で組み立ててやるんだ~!

トーシロがんばる。

精密機器を見ると興奮するというタイプではないが、でも機械いじりはそんなに嫌いじゃない。
ロフトベッド(鉄製)に触って、静電気逃がしてっと。
まずはCPUをマザーボードに取り付けて、マザーボードのディップスイッチをセットする、か。
へー、ディップスイッチって、CPUのタイプに合わせてセットするもんだったのか。
・・・あのー・・・マザーボードのマニュアルが全部英文でワケ分かんないんスけど。
おっ、ここにディップスイッチの絵が描いてある。
文面はよくわからんけど、ま、こんな感じかなぁ。
お次はメモリ3枚をマザーボードにセッ・・・・・って・・・アレ?
メモリ差すとこ、どう見ても2ヶ所しか見あたらないんですけど・・・・・・
これはマザーボードが違うのか?
それとも自分がメモリ差す場所を根本的に勘違いしてるのか?
とにかく電話。
「ああっ、すみません。2枚しか差せませんね、代金をお返ししますので、明日持ってきて下さい」
おーい。
今日2往復したのに、また明日も秋葉原に来いってかい
結局メモリは128MBが2枚で256MB。
それでもこれまでの倍だし、CPUもいいやつだし、速いことは速いだろな。
気を取り直し、CPUとメモリ2枚をセットしたマザーボードをケースに取り付け。
お次はドライブ類だね。
まずは1段目にDVD、2段目にはCD-RWを・・・・・・・・・おい。
2段目のドライブが、マザーボードにつっかえて奥まで入らないのはどういうこと?
DVDもCD-RWもドライブは同じ大きさだから、順番を入れ替えても関係ないし。
また電話。
「そっか、あのセットはミニタワーだと入らないのかー。明日、別のケースと交換しますから持ってきて下さい」
・・・・・・売る前に組み立て確認くらいしとかんかい!!

ケースが合わなくては、今日は本体を完成させるのは不可能。
やれやれ。
でもせっかくだから、俺は明日の新しいケースにすぐセットできるように練習するぜ。
・・・早く寝ろよ、自分。
まずHDDの認識を1番目にするには・・・HDD裏のジャンパーピンをマスターにセット・・・と。
CDドライブではDVDを1番目にするからマスター、CD-RWは2番目で・・・スレーブっていうの?
ふーん。
んで、この中でHDDを1番に認識させるには・・・と。
HDDのフラットケーブルをマザーボードのプライマリ、CDドライブ2つを繋いだケーブルはセカンダリに差す。
フラットケーブルと電源コードの赤線は右に来るように・・・おっとと、FDDだけ逆なのか、紛らわしい。
あとはマザーボードへの電源と、LED用の線なんかと・・・こんなもんかな。
よし?
じゃあ・・・ちょっと電源入れてみよっかね。
これで差し込む向きとか位置とか違ってたら火ィ吹いたり、なんかいろいろ溶けたりして面白いことになるらしいけど。
あんまり自分の本体では見たくないかも。
再度、向き確認。
とりあえず、自分が見る限りはよさげ。
モニタを繋いで・・・と。
電源入れるよ?
入れちゃうよ?
うりゃ。
・・・・・・。
煙も火も異臭も出ないみたいだね、オッケオッケ。
あんまり心臓によろしくないけど、このドキドキ感はクセになりそうだなぁ。
そうか、マゾっ気あったのか、自分。
おおっ、とかやってるうちに液晶ディスプレイに字が!
やったやったー。
う、画面右上にひとつ輝点(ドット落ち)があるのが気になる・・・。
液晶では一つ二つのドット落ちは仕方ないらしいけど、こういうのって、一回見つけると気になっちゃうんだよねえ。
まあド真ん中とかにないだけ、いっか。
よーしよし、CPUもメモリもちゃんと認識してるね。
ディップスイッチの設定もうまくいったらしい。
ドライブも・・・んん?
プライマリの1番がDVDで2番がCD-RWで、セカンダリの1番がHDDで2番がNone?
逆じゃん。
電源抜いて、マザーボードを確認。
なんだよー、なんでセカンダリの方が正面から見て上にあるんだよー。
そういうもんなのかなぁ。
とりあえず差し替えて確認。
よしよし、今度はうまく認識した。
一人で組立なんてどうなることかと思ったけど、今んとこお店のミス以外は全然調子いい感じだ。
なんか悔しいなぁ。
まあ、明日ケース交換してもらったら完成するな。
後残ってるのは、グラフィックボードとドライブ類のインストールCDか。
ここんとこにグラフィックボード差すんかな・・・ああ、このボードがTVチューナー付きなんだ。
・・・・・・。
なーんか足りない気がするんだが、気のせいか?
CPUとメモリ認識したでしょ、HDDとドライブ類も付けたでしょ、TVチューナーでしょ、・・・あれ、モデムは?
入ってないじゃん。
おいおいおい。
メモリといいケースといい、もしかしてこれって店員に試されてんのか?
時間も遅いし、電話はもちろん繋がらない。
パーツの保証期間はせいぜい10日程度だっつーのに、初日からやってくれるじゃねえかよお。
完全にナメられてるな、こりゃ。
やはり自作PCは一筋縄ではいかないということか。
頭を切り替えて、再度、知人数名に電話連絡。

翌日、PCに詳しい知人3人に秋葉原の店まで付き合ってもらう。
しかし拍子抜けするほどあっさりとケースも交換、メモリ代金返金、モデムもゲット。
店員さんも全然平然とした様子で、こういうのは日常茶飯事ってことらしい。
やはりこの店、ただものではない。
しかし知人らが言うにはモノは確かなもので、値段も安いらしい。
多少のミスに目をつぶってでも、充分に買い得だそうな。
ふーむ。
シロートの自分には手強いが、わかってて買いに来るのにはいい店なワケか。
交換してもらったケースは結局ミドルタワー、今度のはサービスコンセントが付いてないのが無念。
念のため、そのまま知人らに家までついてきてもらい組み立てをチェックしてもらうことにする。
家に着くと、どっと疲れが出た。
CanBeが壊れて以来、ろくに寝られず、ろくに食事する気にならないできたツケがきたらしい。
結局、用途別の自作PCが家に4台あるという強者一人に組み立てをお任せ。
なんかものすごく嬉しそうに組み立ててます。
アンタも好きねえ。
「あれ? HDDとFDDのフラットケーブルが足りない?」
えっ?・・・あ、ああっ!
しまったー、ミニタワーケースの中に間違えて入れて返したんだ!!
慌てて時計を見るがとっくの昔に閉店時間。
ぐわー、今日こそはOSインストールできると思ったのに!
知人らに夕飯のピザをおごって、その日はおひらき。
ぐったり。

結局、翌日は自分が壊れた。
この1週間で愛用PC壊れて、人間関係で失望して、勢いで新しい自作PCに手を出して。
組み立てが終わってようやく一段落して、そこで緊張の糸が切れた。
インストール作業が終わったのは、その次の週末。
いろいろ設定ミスで、3回くらいインストールしなおしたけど。
あー、ホントにホントにおつかれー。
DVDが初めて見られたときは、まじで感動した。

さよならCanBe。

新しいPCもようやく設定が終わり、あとはCanBeをどうするか。
HDD以外はまだ使えるんだろうけど、ジャンク屋じゃあるまいし、バラしたところで使うアテはない。
フツーに考えれば粗大ゴミなんだろうけど、出し方もわからない。
第一、そのまま粗大ゴミに出すなんて想像付かなかった。
自分が最後にしてやれることはなんだろう。

道具はドライバーとペンチのみ。
4時間後、CanBeは紙袋3つ分のパーツと小さなブラウン管、オールインワンの箱みたいなカバーケースだけになった。
そしてそれらは、翌日、燃えないゴミとして普通に回収されていった。

終わってみれば、あっけない。

手元に残るのは200本近い大小のネジと、自分が買ってきて差し替えた32メガのメモリ4枚。
何に使うというアテもないけど、なんとなく残してある。
いちおう一緒に2000年は迎えられる、か。

さよなら。
自分に似て器用貧乏なとこが好きだったよ、CanBe。


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