散華

某所県道で、轢かれた猫の死体を見た。
大型車にやられたか、腹の部分だけを綺麗に残して、残りは爆ぜてしまっていた。轢かれてそれ程経っていないのだろう、辺りに散った肉も血もまだ鮮やかな赤。

しばらく呆然と見ているうちにも、車の切れ目を狙っては烏達が降りてきて、辺りの手頃な肉片をくわえては飛び去っていく。それを避けて走っていく車、車。どの運転手も、跡を轢かないように徐行しながら、顔を逸らしたり口元をおさえたりしているのが見える。それほど悲惨な光景だった。
居たたまれなくなり、横断ボタンで近くの信号を止める。シャベルで猫だったものを道路から剥がし、道路脇に運んだ。間近に見ると、昔実家で飼っていた猫の毛色に似ている気がする。しかし肩から上が完全にないので、顔まで似ていたかどうか、今となっては知る術もない。
埋めてやりたいが、付近は小さな花壇ばかりで手頃な場所がなかった。市の環境部に連絡を取る。箱に入れて指定された場所に置いておけば回収すると言っていたが・・恐らくゴミと一緒の扱いで持って行かれるのだろう。
箱に入れる時、道路脇に生えていた名前も知らない花を二つばかり摘んで、腹の上に置いてから封をした。
指定の場所に置いた段ボールの棺桶は、道路の血の跡が乾ききって遠目には分からなくなった頃、訪れた環境部のトラック荷台に積まれて何処かへ去っていった。
終始、涙も恐怖も嫌悪もなく、淡々とこなしている自分がいた。これが自分の飼っている猫だったら、いや猫でなく人だったりしたら、自分は同じように動けるだろうか――そんな事をずっと考えていた。
ふと、何でもない時、不意にあの無傷の腹を思い出し。
同時に、過去に同様の事故で亡くした飼い猫たちのことを思い出した。
そこで涙が出て、止まらなくなった。

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